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耐震基準

耐震基準

ポイントはココ!

  • 1981年6月以前の建築物は「旧耐震基準」となる
  • 継続的な大地震の経験と法改正
  • 一定の地域では耐震強化が義務化されている
  • 保険料の増額と耐震補強の費用

日本では海外に比べて不動産が安く感じられることがあります。しかし、その根底には「地震大国」であるがゆえの耐震制度と文化的・経済的な事情が深く関わっています。

日本の耐震制度を理解する

日本は地震が頻発する国として知られており、そのため世界でも有数の高度な耐震制度を整えています。日本語で「耐震制度(taishin seido)」と呼ばれるこの仕組みは、国全体の建築安全基準を支える重要な柱です。日本で生活する予定の方、不動産投資を考えている方、あるいはこの地震大国が人々の生命や財産をどのように守っているのか知りたい方にとって、耐震制度の基本的な概念を理解することは大変有益でしょう。もともと日本の建築基準法は、20世紀半ば頃までは比較的シンプルなものでした。しかし、地震工学の進歩や大規模地震での建物被害が深刻化していく中で、日本の当局は最新の知見を取り入れながら建築基準法を継続的に改正してきました。特に、日本の建物は「旧耐震基準(1981年以前)」と「新耐震基準(1981年以降)」の違いによって資産価値が大きく変わります。その後も1995年の阪神・淡路大震災で神戸市や周辺地域で建物が甚大な被害を受けたことを受け、政府は耐震基準を強化し、新たに建設される建物が大きな地震動に耐えられるよう法令を改正しました。

幅員が一定以上の主要道路沿い物件の耐震強化義務

東京都など大都市を中心に、特定緊急輸送道路特定整備路線など幅員が一定以上の道路沿いにある建物に対し、耐震診断や補強工事を義務づける条例が存在します。これらの道路は災害時の緊急車両や救援物資の輸送ルートとして重要視されるため、地震で道路沿いの建物が倒壊・崩壊しないよう、強固な耐震性が求められます。旧耐震基準に沿って建てられた古い建物を所有する場合、改修コストが大きくなりやすく、そのぶん売買価格が抑えられる要因になります。

保険料への影響、補強費用の負担

当然ですが、耐震性能が低い物件ほど、地震保険の保険料は高く設定される傾向にあります。保険料負担増 → 購入意欲の低下 → 結果的に物件価格が下がる、という連鎖が生じやすくなります。また、補強には以下に列記するような方法があり、それぞれに費用がかかることになりmす。

1. 耐震(Seishin)

  • 概要
    梁や柱、壁など構造の主要部分を強化し、地震の力に耐えられるよう設計・補強する方式。
  • 施工期間(木造戸建の例)
    約1~2か月
  • 費用の目安(木造戸建・改修の場合)
    50万~150万円程度
    • 住宅の築年数や劣化状況、必要な補強箇所の数によって費用は上下します。
  • 特徴
    建物の骨組みを補強するため、比較的費用を抑えながら倒壊リスクを大きく減らせます。必要最低限の補強工事のみを行うケースも多いです。

2. 制震(Seishin)

  • 概要
    ダンパーやショックアブソーバーなどを設置し、地震エネルギーを吸収して建物の揺れを軽減する方式。
  • 施工期間
    約1~2か月(耐震補強と並行して行うことが多い)
  • 費用の目安(木造戸建・改修の場合)
    100万~250万円程度
    • ダンパーの種類や設置箇所数によって金額が変動します。
  • 特徴
    耐震補強と組み合わせると、より揺れを抑えられ、建物への負担や住人の恐怖感も減ります。

3. 免震(Menshin)

  • 概要
    建物全体を免震装置(アイソレーターなど)の上に載せ、地盤の揺れを建物に伝わりにくくする先進技術。
  • 施工期間
    • 新築の場合: 基礎工事の段階で導入しやすいため、工期そのものは大幅に伸びるわけではありません。
    • 既存住宅の改修の場合: 約2~4か月以上かかるケースもあり、大がかりな工事となります。
  • 費用の目安(木造戸建の場合)
    • 新築での導入: 一般的な規模(延床面積30~40坪程度)なら、本体工事費にプラス200万~300万円程度が見込まれます。
    • 既存住宅の改修: 建物の基礎を大幅に工事する必要があるため、300万~500万円以上かかるケースもあります。
  • 特徴
    3つのアプローチの中でも最も効果が高く、大きな地震でも建物への揺れを大幅に低減できます。ただし、既存住宅に後付けする場合は工事規模が大きくなるため、費用や工期が増す傾向があります。

補足:上記はあくまで概算の金額です。地方都市と首都圏では人件費や資材費が異なるため、同じ工事内容でも費用に差が出ます。築年数や劣化の進行状況、耐震診断の結果によって補強の必要範囲が変わり、費用も増減します。詳細は専門業者に見積依頼をお願いします。

まとめ

「日本の不動産が安い」と感じられる背景には、1981年以前に建てられた旧耐震物件の市場在庫が多いことや、主要道路沿いの耐震強化義務、地震保険料の高さなど、地震大国ならではの制度的要因が大きく関わっています。過去の大地震を教訓に、何度も法改正を重ねてきた結果、新基準を満たさない物件との価格差は一層明確になりました。

しかしながら、安い物件を購入しても、後々に耐震補強や制震・免震工事を行う場合、その費用負担がかさんでトータルコストが高くなる可能性もあります。一方で、しっかりと耐震改修が施された物件や新耐震基準の建物は、安全性だけでなく資産価値の面でも安定しやすいでしょう。

日本で不動産を検討する際は、1981年を境とした耐震基準の違い自治体独自の条例(主要道路沿いの耐震義務など)、そして三つの耐震アプローチの工事期間や費用をしっかり把握することが肝心です。これらの情報を踏まえてこそ、「安い」と感じる物件の本当の価値と、将来的なリスク・負担を見極めることができます。